impracticable theory 机上の空論

ポータブルオーディオ 主にカスタムイヤーモニター

快適な難聴対策の耳栓 - FitEar Silence

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今回のレビューはFitEar製品ですが、カスタムイヤーモニターでもユニバーサルのイヤモニでもありません。
FitEarにおいてはイヤモニよりも歴史のある耳栓についてです。


FitEar Silence公式サイト
http://fitear.jp/silence/index.html



耳栓といってもそこはFitEar、個人の耳型にぴったり合ったものです。しかもフルシリコン製です。
イヤモニのSKUにはシリコンのものはありませんが、このFitEar Silenceはフルシリコンが基本となっているようです。


FitEar Silenceには様々なオプションがあります。
外観的なところでは、豊富な種類のカラーが選択できます。
http://fitear.jp/silence/color.html
(このあたりはFitEarのイヤモニのラインよりも優れているポイントですね)
また、シリコンではなくイヤモニと同じアクリルを使用したハードシェルの耳栓も作成できます。シリコンの方が装着感はよく、あごや首の動きがあってもシリコンの柔らかさで動きに追随でき遮蔽が落ちることはないのですが、装着のしやすさなどでアクリルを選ぶ人もいるようです。
(シリコンの場合特に耳穴に入れにくくなることが多く、装着時にワセリンなどを塗って滑りやすくすることが推奨されています)
また、シェルの造形もヘリクスまで含んだフルシェルタイプのほかにカナル部だけのものも作れますし、取り外ししやすいようにとっかかりをつける事が出来ます。このとっかかりには穴が空いており、落とさないようにひもを結んでおくこともできます。
また、左右の区別をつけやすくするために右側に赤い印がつけられています。
このあたりは流石に補聴器での実績が豊富なFitEarというところでしょう。


そして、最大の特徴は音質に影響を与えずに音圧(音量)を下げるフィルターを搭載出来る点です。


通常の耳栓の場合、スポンジやシリコンなどの素材で作られている事が多く、高音の減衰が激しく耳栓をつけるとこもって聞こえてしまいます。
一方、FitEar Silenceに採用されているフィルターは、明瞭感を損なう事が無くまるでスピーカーのボリュームを絞ったように感じられます。


以前からこのFitEar Silenceを愛用していたのですが、新しいフィルターを採用したものを入手しました。
以前のフィルターと比較した場合、低音の減衰がより強くなっているようです。また高音に少しアクセントを持たせているようで、これが全体的な明瞭さに大きく影響していると思われます。



旧型フィルター搭載FitEar Silence

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旧型フィルター搭載FitEar Silenceは高音の減衰が比較的大きいため、騒音環境下で人の声を聞き取る必要がある場合にはとても有効です。
オフィスで仕事をしている時にコレを装着すると周りのガヤガヤやキーボードのカチャカチャ、PCや空調のファンの音などが消え去りとても快適な空間になります。
それでいて人の声はしっかりと聞き取ることが出来るため、業務を妨げることはありません。
また、コレを作る際に出来るだけコンパクトに作ってもらったので、バスや飛行機の中など比較的うるさい環境で寝るときには重宝します。
一方、ライブなどでは高音の減衰の強く少しモヤっとするのが気になっていた時に出会ったのが新型フィルター搭載FitEar Silenceです。

新型フィルター搭載FitEar Silence

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先ほどとは全く異なる形状のフィルターを採用います。
もしかすると、このフィルターはどこかで見たことがある方もいらっしゃるかもしれません。
最近取り扱い店舗も増えてきたCRESCENDOの耳栓と同じフィルターを使用してるようです。
またJH AUDIOの最新機種Ambient FRにもこのフィルターが搭載されています。
このフィルターの特徴は、積極的に帯域に応じて低減する量を調整する事により聴感上のフラットさを目指している点です。
CRESCENDOの耳栓にはいくつかのタイプがありますが、たとえばドラマー用のフィルターでは全体の減衰率が最も大きく、また高音の減衰が比較的大きく取られているようです。
ドラマー自身が音源の一番近くにいるため、大音量から耳を守りつつ全体として音を聞き取りやすくなるように設計されています。
ボーカル用のフィルターでは中音以降の減衰が少し小さく、声を聞き取りやすいようになっているようです。
各フィルターの特性についてはグラフがあるので調べてみてください。
ただ、FitEar Silenceには業務用途と一般ユーザー向けの製品があり、これらのフィルターを選択できるのは業務用途のみです。
ですが、一般ユーザー向けのFitEar Silenceは一種類のみのようですがそれでも効果は十二分に体感できると思います。


さて、新型フィルター搭載FitEar Silenceを実際にライブ会場で使用してみました。
今まで旧型フィルターのFitEar Silenceではややこもって聞こえていたのですが、新型フィルターでは完全に払拭されています。
聞こえ方は非常に自然です。こういったライブハウスなどでは低音と高音をかなり持ち上げて刺激的な音にしていることが多いですが、それがフィルターを通すことによってフラットな自然な状態に近付いているようです。
また、旧フィルターでは周りの様子が分かりづらく疎外感を感じるという問題があったのですが、それと比較すると周りのざわつきや話し声などもきちんと聞き取れます。
あまりに自然で、耳栓をつけないとどんなものなのかと試しに外してみると、あまりの音量の違いにびっくりしました。とても耳栓なしで耐えられる音量ではなさそうです。
ライブ会場では、とくにスピーカーの近くではあまりにも音量が大きすぎるために逆に聞き取りづらいということが多々あります。スピーカーの直前では120db以上に達することもあるので当然でしょう。
この音量を2,3時間も聞いていると聴力に影響がでるのは間違いありません。
その点、FitEar Silenceを使用すると20〜30dbを低減でき、安全に聞こえる範囲が広くなります。
音量と時間に応じた聴覚へのダメージは以下を参考にしてください。
http://www.entry-japan.com/j/medi/hearing_loss.html

ライブなどでは最悪7分で難聴になる可能性があります。
適切に耳栓を付けていれば、この問題を大幅に軽減することができます。
また、先ほども書きましたが爆音よりも音量を抑えたほうが聞き取りやすいので、アーティストの音を正確に聞きたいのであればなおさら耳栓は必須だと思っています。




FitEar SilenceやSensaphonicsのMusician's Ear Plugs等のカスタム製品ではなく市販のCRESCENDOやER-20などでもいいかもしれません。
どちらも優れた音響設計で適切に音質を保ったまま音量を下げることができます。
ただ、ユニバーサル設計のため、多くの人には装着に痛みを伴うと思われます。実際に僕自身もこれらのイヤーピースの使用は耐えられません。
また、サイズが合わない場合は密閉できずに本来の性能が発揮できず難聴対策の役に立たないという場合もあります。
装着できない耳栓にはなんも意味もありません。そういった人にはFitEar Silenceはとてもよい選択肢になるでしょう。
ただし、個人の耳型にあったオーダメイドのものなので、それなりのお値段はします。オプション次第で金額は変わりますが、2万円以上するものです。



まとめ的なもの

一度失った聴力は現在の医療では回復できません。出来るだけ自分の耳は大事にしたいものです。
僕はライブなどの騒音環境下に行くときは同行者のための予備の耳栓を持って行くようにしています。
ライブの後に耳鳴りがしたという経験は無いでしょうか。それは難聴の症状です。耳鳴りがひどい場合は急いで耳鼻科に行ってください。一生の聴力がかかった問題です。
そして、是非とも耳栓の使用を検討してください。


出来れば一生、補聴器でFitEarのお世話にはなりたくないものです。
音を聞くということを考えるとこのFitEar Silenceは、あるいはイヤーモニターよりも重要な製品ではないかと考えています。
積極的に耳を守るという発想、これから浸透していくといいなと思います。




最後に、普段イヤホンやヘッドホン、スピーカーなどで音楽を聴く際も音量は控えめに!
知らず知らずのうちにかなりの音量まで上がっているかもしれません。
セーフリスニングの精神を忘れないようにしたいです。

http://safelistening.net





Sensaphonics(センサフォニクス)社製のカスタム耳栓、についてもレビューを書きました
it.hatenablog.jp

THE SIRENS SERIES - Roxanne レビュー

JH Audioの新フラグシップ、THE SIRENS SERIES - Roxanneのレビューです。
カタカナ表記だとロクサーヌになるようですね。


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片耳12ドライバ、計24ドライバの世界最多ドライバ搭載機種です。3ウェイで低・中・高それぞれの帯域に4ドライバずつを割り当てています。
4つのドライバは1つのユニットになっており、SoundrIVe technologyと呼ばれているようです。
また、音導管の長さを調整することで鼓膜に到達する時点で全ての周波数での位相をそろえるFreqphase time|phase WaveGuideも搭載しています。

試聴もしない状態でオーダーしたのですが、聞くまでは完全に12ドライバ乗せたいだけのネタ機種だと思ってました。
ところが聞いてびっくり、非常に質の高いものです。全イヤモニ中最高峰に位置しているのは間違いないでしょう。


オーダーについて

オーダーから届くまで四ヶ月。その間何度問い合わせてももうすぐとしか返事して来ません。下手すると返事すらきません。
しかも後にオーダーした人のを一ヶ月以上先に作る始末です。どうなってると問い合せるとコピペの謝罪文を送ってきます。もうこういう会社なのだとあきらめるしかありません。
途中から来ない期間が長い方がネタになって面白いとか思い始めたくらいですね。オーダーする際は気長にお待ちください。
もうちょっとすると生産が落ち着いて早くできるようになるかもしれません。


ケースについて

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ネガティブインプレションを採用したカーボン製のケースはカッコイイです。とてもカッコよく中二心をくすぐります。でも実用性は皆無ですね。
重いし、開けづらいし、ネガティブインプレション故に納めにくし、すぐ壊れます。メタルのフレームにカーボンのケースを貼り付けているだけのようで、カーボン部を持って閉めようとしたらペリッとはがれてしまいました。
もう使いません。我が家で一番かっこいいタンスの肥やしになることでしょう。


シェル

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シェルはアートワーク無しのクリアシェルでオーダーしました。クリアシェル好きなのでカーボンシェルは初めから考えていませんでした。今までのもののすべてクリアシェルで作成しています。
シェルは結構綺麗ですね。個人的にはUMよりもいい出来だと思います。最近コーティングを変えたらしく、とっても滑らかでつやつや。透明度も高いです。
しかし、カナル先端に気泡が集中しているのがちょっと気になります。これはFreqhpase搭載機種の共通に特徴のようです。シェルの外側を作成し、ドライバと音導管をレイアウトした後にカナル部に樹脂を充填しているようです。
シェルは12ドライバを押し込めるためか結構分厚め。くみたてLabやFitEarのような飛び出しの少ないコンパクトさはありません。

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オリジナルのねじ式コネクタは4ピン。これにより低音調節機能を入れることが出来ました。反面、大きなコネクタを納めるためかヘリクス側はとても分厚いです。といっても3DDと同等くらい。
フィッティングはまずまず。好みよりはちょっと緩め。ただ一般的にはちょうどいいくらいだと思います、個人的に極端にきつめのフィットが好きなので。

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Freqphaseの為か、左右でドライバ配置に結構違いがあります。ただこれは音には影響はないようです。音導管の長さが正確であれば問題無いのでしょう。
搭載されているドライバはすべて特注品のようです。左右で型式が微妙に違ったりもします。クリアシェルなのでBAの型式もネットワークも丸見えだけど、ここで公開はしません。気になる人はTwitterとかで探してみてください。


音質

注意点として、今まで聴いた試聴機の音とは全然違うということがあります。
そもそも試聴機では毎回印象が違いました。ヘッドフォン祭2013秋ではUE18みたいなカマボコサウンドに聞こえましたし、ポタフェス2013では高音が旧JH16かと思うほど刺さっていました。こういう高音の刺さりはそれはそれで好きなんですが。
おそらく、試聴機の出来がとても悪かったんだと思います。一部の試聴機はユニバーサルのプロトタイプだったらしいので、ユニバーサルの出来がとても心配です。
最近出荷さえているユニバーサルはステム部が改善されているので、また違った印象になっていそう。ちょっと気になります。


閑話休題、カスタムの音の印象としては、とにかく超高解像度で分離が桁違いによく音場が広いです。12ドライバとかネタ機種だろうとか思っていましたが、めちゃくちゃ質がいいです。
特徴的なのはとても柔らかい音だと言うことですね。時に低音の柔らかさはBAでは聴いたことがないレベルです。
でも、柔らかいと言っても決して緩いわけでありません。むしろ高解像度と分離の良さと音場の広さが相まって非常にクリーンなイメージです。
クリーンというのは全体的なイメージでもあります。全域に渡ってピークもなくゆがみがとても少ないです。特にボーカルレンジが顕著ですね。
JH13のようなエッジを感じるクリアな解像度の高さではなく、柔らかいものの一つ一つの音を詳細にすべて聞き分けることができます。
楽器やボーカルの音の大きさだけでなく、それぞれの距離感が分かるような感じかなと。

他の機種と比較した場合一番差が出るのは、実は高音です。
刺さりはほとんど無いしピークも感じないのに耳にしっかりと残ります。残響もしっかり聞き取れ、非常に詳細です。
おそらく他のBA搭載機種ではあまりないほど超高音の音圧維持が可能になっていると思います。
独特の音の柔らかさも相まって、おそらくダイナミックドライバ好きが移行して唯一耐えられる機種だと思いました。
ピークがなく(ごく一部あるけど)聴くことにストレスを感じにくいのでいつまでも聴いていられそうですね。

低音は柔らかで高解像度、そして超低音までよく伸びます。柔らかさはゆがみが少ないためだと思いますが、ほんとにダイナミックドライバのようです。反面、CIのようなキレキレの低音が好きな人はダメでしょう。
音の輪郭をくっきり描くタイプではないですが、一音一音丁寧に詳細に鳴らし分けます。超低音での音階もしっかり聞き取れます。
ただ、後述の低音調整機構と相まって、中低音あたりまで持ち上がるので人によっては好き嫌いが分かれるかもしれません。

音場はとても広いです。上下左右に広く分離がよく定置もしっかりしています。これは他社のうたい文句ですけど、本当にまるで3次元を感じさせるほどですね。
数人が入れ替わり立ち替わり歌うような曲では、その際にそれぞれの立ち位置が分かります。コーラスの重なり合いがしっかり分かります。ビッグバンドでは楽器の距離感が分かります。
おそらくFreqphaseにより位相が揃っているためだと思いますが、これは他のイヤモニとは一線を画すレベルです。Roxanne最大の特徴だと思います。


低音調整機構について

ケーブルの根元から10cmの位置に可変抵抗があり、ここで低音を15db変動させることが出来ます。しかも左右独立して調整できるので、左右の聴力差がある人にも幅広く対応可能でしょう。
最小の状態にセットすると、個人的にはサブローがちょっと物足りなく、僅かにカマボコに感じます。09時くらいの位置でフラットと感じますね。
低音を強くするたびに、低音担当楽器に近づいていくようなイメージです。中低音まで一緒に持ち上がるので、ボーカルの印象もずいぶん変わります。男性ボーカルとかはどうしてもつられて腰が低くなってしまうのがちょっと気になります。
サブローがグッと持ち上がったような音が好きな人にはなじまないかもしれません。
最大にすると流石に盛りすぎですがこの状態、実は極小音量時に不足しがちな低音を保管できることでDAPの最小音量設定でも満足して聴けるというメリットがあります。これが低音調整機能の最大の利点なんじゃないかと思うくらい便利です。
でもやっぱり壊れやすいみたいで、グリグリ回して試してるうちに調整のノブが削れてぼろぼろになりました。ここは要改修だと思います。少なくとも二年くらいは耐えられる耐久性がほしいです。
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壊れやすいのはなんとかならないものでしょうか。音は間違いなく最高峰の一つだが、これほど壊れやすいと人に勧めるのは難しいですね。
あと、コネクタから10cmというのが微妙に邪魔で、プレイヤーをポケットに入れるとちょうど飛び出す位置です。もうちょっとケーブル全体を長く、低音調整部はケーブルから15〜20cmくらいの位置にすると取り回しがよくなると思うのですが…
黒ケーブルで初期にあったねじ式コネクタの破損は現在は解消しているようです。


よくないところ

弱点がないわけではありません。
特に残念なのは、ギターに鮮やかさが足りないことです。スチールガットの鼓膜を擦るようなザリッとした感覚がないので不満に感じます。
おそらく、ピークがほとんど無い事の副作用だと思いますが、個人的には高音はもうちょっと癖がほしいです。刺さるほどの高音が好きな人には不満が出るはず。
あと、ボーカルは厚みがありクリーンなものの芯があるような音ではないので、くっきりとしたボーカルが好きな人には合わないでしょう。その分近い位置で広がって歌うボーカルが好きな人にはたまらないものだとも思いますが...
個人的にはボーカルはもうちょっと引いてくれた方が好みですね。
低音ももっとキレがあった方が好きです。エッジ感が足りないと思うことは多々あります。


再生機器との相性

AK120直だとちょっと音が緩くなります。アンプを使用するとだいぶ締まった音になるので、駆動力はそれなりに必要なようです。
クリアな高音寄りのアンプがあれば相性がいいのではないでしょうか。
あまり多段にはしたくないのですが、駆動しきった音を聞いてみたいという興味に駆られていて危険です。


まとめ

全体的にみると、質は高いものの気持ちいい鮮やかな、耳障りのいい音を奏でる機種ではないと思います。萌音であったようなキレキレの叩きつけるような低音ではないですし、UE10のような鮮やかなギターはないです。2XSのようなくっきりとしたボーカルもないです。
しみじみと深く感心するようないい音ですが、感動してテンションがあがるような気持ちよさはありません。
ですが、RoxanneにはBAでは未だかつてなし得なかった柔らかさや超高音の延びがあります。このサイズのダイナミックドライバーでは到達しない高解像度があります。多ドライバ故の濃さがあります。比類なき分離と音場の広さがあります。
それは、弱点を補ってなお余りあるものだと思います。おそらくこれがRoxanneでJH氏が目指したものなのでしょう。
そういえば、先日ディスコンになったJH-3Aの開発時の目的とされていた位相の改善はFreqhpaseで解決出来ていますし、JH-3Aにしかなかった低音調整はケーブルに内蔵されています。
完膚なきまでにJH Audioのフラグシップということなのだと思います。

結論としては、音としてはとてもお勧めできます。柔らかい音が嫌いでないなら是非購入を検討すべきですね。
ただ、納期の長さや壊れやすさについては、お覚悟のうえ…





おまけ

Roxanneはハイレゾ対応してますよ。ほら、バッチリ!

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おまけ その2

f:id:impracticable_theory:20140530230818p:plain:h16,left Roxannneのf特をひっそり貼っておきます。
6,7KHzあたりと12KHzあたりの強烈なピークは測定環境固有の癖なので差し引いて見てください。あくまで雰囲気を知るために小ネタのようなものです。
そもそもf特だけで音質が語れるものではありません。特にこのグラフは単体のf特なので、同条件の他機種との比較にも使用できません。
さて、ざっとみると15KHz以降にピークを作っているのは見事ですが、さすがに商品説明に記載されているように23KHzまで落ちないというわけにはいかなかったようです。3~4KHz付近のちょっとしたピークはボーカルの表現に影響してそうです。
f特はあくまで参考程度にしかならないですが、見ているとなかなかおもしろいですね。
ちなみにこのレビューはf特を見る前に書いたもので、f特を見た後も加筆・修正はしていません。完全に聴いたイメージだけで書いたレビューですのでご安心(?)を。



JH AUDIOから Roxanne が届きました

発注から四ヶ月、THE SIRENS SERIES - Roxanne がようやく届きました。

http://instagram.com/p/luRMg6CZK7/
http://instagram.com/p/luRMg6CZK7/

ずいぶん待ちましたが、質はなかなか良さそうです。


ネガティブインプレッションが完全な形ではなくカナル部が省略されたりしてますが…
http://instagram.com/p/luRNAMCZK8/
http://instagram.com/p/luRNAMCZK8/

シェルはとても綺麗です。中のネットワークもバッチリ
http://instagram.com/p/luRNgACZK-/
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Freqphase故なのか、左右でドライバー配置が結構違います。
http://instagram.com/p/luS5McCZM1/
http://instagram.com/p/luS5McCZM1/


詳細なレビューはもうちょっと鳴らしこんでからですが、試聴機とは比べものにならないくらいい音です。ちゃんとバランスとれてますね。
低音はゆるいというより、歪みがなくて柔らかい感じがします。
高音の伸びもなかなかよいですね。BAでは随一だと思います。
音場も広いし何より分離がよく、とても立体的に聴こえます。
というか、これBA苦手な人もいけるんじゃないかなーという印象です。

そのうち詳細なレビューと、BA12ドライバー vs ダイナミック1ドライバーの比較レビューとかやってみたいと思います。

  • 追記

レビュー書きました。こちらです。
THE SIRENS SERIES - Roxanne レビュー - impracticable theory 机上の空論

くみたてLabより、SENNHEISER IE800 リシェルが届きました

http://instagram.com/p/lUZL6GiZIq/


知人に譲っていただいたIE800をくみたてLabにてリシェル(リモールド)してみました。

IE800の音質の良さは言うまでもないでしょう。
ただ装着感に難があったのですが、完全に解消しました。
音に関しては、少し高音が強く出るようになっているようです。
BAでは出せない豊かな超低音と、落ちることなく伸びる超高音は実に素晴らしいですし、イヤモニにありがちなみっちりとした閉塞感もないです。

ゼンハイザー渾身の低音強化用の二つのベントをそのまま利用するためにハウジング全体をシェルに埋め込んでいます。
実にいい仕事してますね。

ダイナミック型の利点を存分に活かしたゼンハイザーの技術力とくみたてLabの高いシェル造形技術の融合でしょうか。
IE800のリシェルはまだ正式なサービスではないですが、今後何か動きがあるかもしれません。

Unique Melody 3DDの真価を探る

ポテンシャルはいいはずなのに中高音のピークがきつすぎてダメな子ですよ、というところで最初のレビューを終えたのですが、どうしてもUM 3DDの真価を確かめてみたくなりました。

他の3DDユーザーも予想されていますが、乱雑に処理された音導管が不自然なピークを作ってるという可能性を排除するために、カナル部の中で飛び出している低音と中音用の音導管をそれぞれ切断しました。 f:id:impracticable_theory:20131130141601j:plain

カナル先端から細いナイフを差し込み、注意深くかつ大胆に、というか適当に切除します。

もちろん保証が受けられなくなることは覚悟済みです。よい子はまねしないでください。良い子でなくてもまねしないでください。

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音導管を綺麗に処理した結果ですが、目論見通り中高音の強烈なピークがなくなりました。 以前は聴くに耐えない感じでしたが、これなら好みの範囲内に収まると思います。

ただ、左右のマッチングの悪さは健在です。これはダイナミック型だと歩留まり的にどうしようもないところでしょうか?

ということで改めて聞き直すと、3DDはダイナミックにしてたとてもすっきりとしたサウンドであると再認識します。

3つのドライバを厚みを出すために使用するのではなく、各帯域に余裕を出すために使用しているのでしょうか。マルチドライバにありがちな濃さは全くありません。 (その分変なピークはありますが。音導管切除してもまだ残ります)

低音は非常に低いところから轟くようにならします。ボーカルはくっきりと芯が通った感じでセンターにバッチリ定置し、高音は刺さらないのに超高音まで伸びやかに広がっています。 あれ、これわりといいんじゃない?とびっくり。アコースティックのソロボーカルものとかに最適だと思います。

特にこんなに深さと解像度を両立した低音は他のイヤモニではないので必聴です。 こう音がよくなると遮音性の低さも外で使用する際に周りの音を聞けて安全なんじゃないかと前向きに考えられそうです。

ということで、ちゃんと作成されているのであればわりとよさげな3DDでした。 問題はUMのビルドクオリティにばらつきがありすぎるということで…

もし、万が一3DDをオーダーしようか検討している人がいるなら、UMが忙しい時期は避けるようにしたほうがよさそうです。

Unique Melody 3DD レビュー

世界初、ダイナミック型ドライバを3基搭載したカスタムインイヤーモニター、Unique Melodyの3DDのレビューです。


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初っ端からいいますが、この機種の購入はおすすめできません。
ダイナミック故の扱いの難しさか、左右のマッチングすらあっていません。
全体のバランスも非常にピーキーで、オーディオ的にも難しいものです。



シェルの造形は独特です。
フェイスプレートの全面を低音用のドライバが占め、シェルの中に横を向いた中音用のドライバ、カナル部の根元に高音用のドライバがあります。
もっとも特徴的なのは音導管の作りで、高音ドライバから耳穴いっぱいに拡張されています。
その太い音導管に差し込むように、低音と中音用のドライバから細めの音導管が送られています。
リリース以前にはトリプルボア(三つ穴)という触れ込みだったのですが、シングルボアになっていますね。 
低音と中音用の音導管は高音用の音導管に接合されておらず、若干の隙間が見えます。もしかするとダイナミック型故の前面ベントのような処理なのかもしれません。
おそらく、各ドライバから細い音導管で引き回すと音圧を確保できなかったのではないでしょうか。そのため耳穴いっぱいの太い音導管内に音を響かせ音圧をあげているのではないかと思います。
そのせいか中高音にピークが多く、不思議な響きが乗っています。


やはり遮音性はかなり低く、一般的なダイナミック型カナルイヤホンと同程度です。
反面、音漏れはほとんどありません。このあたりから音導管で中高音の音圧を稼いでいるのではないかなーと予想しています。



あと今回からUMのケーブルの仕様が変わっています。現行UEのようにイヤモニ側に凸型のソケットがあり、ケーブル側はピンにスカートが履かせられています。
このソケットは、3DDでは大きなダイナミック型ドライバを使用しているためシェル内部の容量を大きく確保するためとのことです。
使用感は悪くないと思います。ちょっと安っぽいですが。



おすすめ出来ない音質と言っても、低音・中音・高音を別々に聞くと素晴らしいポテンシャルが垣間見えます。


低音は非常に深いところから轟くような音を奏で、さすがはダイナミック型といいたくなるような迫力があります。
それでいてダレることなく解像度を確保しているのは素晴らしいですね。
中音はくっきりと浮かび上がって聞こえ、非常にボーカルが聞き取りやすいです。女性ボーカルなどはびっしりとセンターに決まってとてもクリアですね。
高音は刺さることがないのに素晴らしく高いところまで伸び、BA型では出せない超高音にまで及びます。



が、それが合わさるととても悲惨なバランスになってしまいます。
低音はかなりボリュームをあげないと出てこないですし、とにかくボーカルがやかましいです。
中高音にあるピークのせいでボーカルとコーラスが同じ声量に聞こえる時すらあります。ギターなんかもヒステリックになってしまいますね。やたらと中高音のピークが気になります。
そもそも左右のマッチングがとれていないのも相まって普段聞いている曲が全く聞き慣れないものになります。



中高音のピークがひどいと感じるときには、低音調節機構が役に立ちます。
これは低音ドライバの背圧をフィルタでコントロールするもので、低音の量をかなりの幅で調整可能です。
フェイスプレートの真ん中にある丸い金属のリングがそれです。このリングを交換します。このリングの裏は布(もしくは紙?)になっていて、この布をかえることでドライバ背面で動かせる空気の量を調整するのでしょう。
これで低音を出す設定にしておくと相対的に中高音のピークが気になりにくくなります。
とはいえ標準パッケージにある3種類のフィルタではいずれも低音の量がもの足りません。(変なピークがなければあるいは??)
最終的には非常に薄い不織布を使用してフィルタを自作し、より低音が出るようにしました。
とはいえまだまだピークは気になります。


http://instagram.com/p/fWjdKtiZJe/



という感じで、こういったいろいろな試行錯誤や変わった音を”楽しい”と思えるような人ではないと購入はおすすめできません。


ただ、左右のマッチングと強烈なピークを改善すると素晴らしいモノになるのではないかという片鱗は感じられます。
それだけに惜しい。。。
やはり、ダイナミック型は非常に扱いが難しいようですね。もうちょっとノウハウを積んでからリトライしてほしいところです。
うーん、もったいない。。

Unique Melody 3DD 届きました

http://instagram.com/p/fNGoeziZDm/3DD届きました

Twitterでつぶやいたとおり、

3DD、わりといいんじゃね?ボーカルがピーキーで左右のバランスおかしくてフィッティング悪くて高音出ない以外は結構好きな感じよ、これ

って感じですが、エージングで大化けするらしいのでまだ様子見です。


出来の悪い子ほど可愛いとも言いますし。

音が落ち着いた頃にレビューしたいと思います。