impracticable theory 机上の空論

ポータブルオーディオ 主にカスタムイヤーモニター

くみたてLab KL-REF レビュー

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1年ほど聞き込んだのでさすがにそろそろレビューを公開しようかなと… 

デュアルダイナミックドライバーを低音に使用したハイブリッド機で、くみたてLabのリファレンスの音になっているようです。
特徴的な音ですが、イヤーモニター史上最高の低音を出す機種だと思います。
また、シェルの美しさも特筆すべき点ですね。作成者のKumitateKさんも言っていますが、まさに傑作です。
クリアシェルの透明さが随一で、フェイスプレートなどはまっすぐ正面から見ると何もないかのように見える事すらあります。

 

 

シェルの造形について

シェルの高さは結構あり、結構耳から飛び出して見えます。低音調節機構にデュアルダイナミックドライバーと大きなものを複数配置する必要がありますし、中音・高音ドライバーはカナルに向かってまっすぐに音導管が伸びるようにレイアウトされているので、シェルが高くなっているようです。
ヘリクスやカナルは長めで、わりとシビアな装着感になりがちなところですが、痛みは全く無いように作られています。


反面、密閉性能はちょっと低く、音が抜けることがあったりします。リフィットを経てだいぶ改善はしましたが、正直なところ、装着感という点においては国内他社にはまだ劣ると思います。

 
カナル部は少し細めなのか完全な密閉が得られない事がままあります。後述しますが、それでもある程度の低音の量感を得られます。


今は利用できなくなっていますが、オーダー時はソフトカナルが設定出来たので、これはソフトカナルで作成しています。
ソフトカナルでも透明度が高く、ハードシェルとの接合もナチュラルでとても綺麗です。
Westoneのソフトカナルのような熱可塑素材ではなく、ハードシェルの周りを柔らかいグミのような素材で覆う構造になっているようです。
耐久性には少々難あり、コーディングが端から剥がれていってしまっているのが残念です。(ポケットに入れっぱなしにしていたりと運用が悪いという事は大きいと思いますが)
現在はソフトカナルのオプションはもう指定できないようになっているので、いろいろ苦労があったのかもしれません。

 

構造的な話

シェルの中を覗くとデュアルダイナミックの低音ドライバーがひときわ目立ちます。向かい合わせに配置された平行二発はオーディオテクニカの某機種とは違いプッシュ・プッシュで動いているとのこと。

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一般的なダイナミックドライバー採用機種によくあるような、装着時にドライバーがベコベコクチャクチャ鳴らないようにするための秘策として排圧制御があり、それによって鼓膜側の空気の圧力を適切に抜いてダイナミックドライバーが最適な環境で動けるようにコントロールしているようです。この排圧機構は前面ベントのようですね。

デュアルダイナミックドライバーを納めるために専用のユニットを3Dプリンターで作成されています。そのユニットから伸びるチューブの配置にはちょっとした秘密があり、いかに二つのドライバーが不均衡にならずに動かせるか、ということにかなり気を使った設計とのことです。
この3Dプリンタ製のハウジングはマイナーチェンジを経ており、最新のものではかなりコンパクトになっているようです。

 

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シェルのケーブルコネクター付近に小さなベントが空いているのがダイナミックドライバー使用機種っぽいですね。かなり穴は小さいので遮音性や音漏れには影響はないと思います。


中音ドライバーはカノンの中音と同じBAドライバーを使用。でもボーカルはキリッとセンターに定置して女性ボーカルとかはとてもいい感じですね。カノンと違ってこのドライバーが伸びる音導管は出口での掘り返しはありません。


高音BAドライバーはKnowlesのSWFK。(Knowles曰く)ハイレゾ対応の高出力の高音用デュアルドライバーです。大音量だと結構歪むはずですが、うまく歪感を低減してるようですね。ピークはそんなに出さずに刺さらないけど伸びてる印象です。高音の掘り返しで超高音辺りの調整をしているようです。掘り返しはそこまで太くなく長め。

 

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音導管は計三本で低中高それぞれ一本ずつあります。低音はかなり細くてローパスを、中音は普通に伸ばして、高音は掘り返しありです。音導管の太さだけじゃなく、長さもかなり厳密に作っているようです。さすが理論派の設計者だけはありますね。音響抵抗の位置もかなり厳密のようです。


一時期発売されていたKL-REF Type-Sはネットワーク設計は通常のKL-REFと同一で、この音導管の調整で音を変えているそうです。イヤモニ設計の面白く奥が深いところが感じ取れますね。


電気設計については、設計者曰く『ネットワークについては「叩いて伸ばす」をコンセプトに低能率で滑らかなサウンドを目指して設計しました。おかげでくみたてLabのラインナップ中で最多の素子を使用してます。』とのこと。それもあって比較的低能率に作られていますが、高音のインピーダンスだ低くなっているようなので、しっかりとしたアンプで鳴らしてあげた方がいいかもしれません。


こういったギミックが盛りだくさんで、この機種はUE18に並ぶほど電気・音響ともに設計を詰めたイヤモニじゃないかと思っています。カスタムで理想的な装着を得られる前提じゃないとできないレベルで設計を詰めていますね。

ただ、そのために作成難易度がかなり上がっていて、初期不良率もかなり高いように思えます。(1年以上も経った最近では製造に慣れてきて不良率も下がってきていると思いますが)

 

音質

もっとも特徴的なのはやはり低音です。
歪みなく柔らかく、素晴らしい解像度の低音です。また、排圧機構によるものなのか、超低音(おそらく一桁Hzから)の再生も可能です。
コントラバスの胴鳴りを再生しきったイヤーモニターはこれが初めてだったのでとても驚きました。鼓膜をぐっと押すような低音を感じられて、映画を見るときなんかにも良い感じですね。

 

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低音部には半固定抵抗があり、これをいじることよって低音の量を変えることが出来ます。
低音調節機構自体はJHの低音調節機構のように壊れやすそうな印象がなくしっかりしているのはいいですね。


低音調節でキーになっているのが、細い音導管を用いたローパスです。
低音調節の機種はロクサーヌにもありますが、ロクサーヌは低音を持ち上げると中低音まで一緒に持ち上がり、全体的な印象がもやっとした感じになってしまうのですが、KL-REFは低音のボリュームを最大にしても他の音域を邪魔することは一切ありません。見事にコントロールされた低音です。
可変の幅に関しては、最低にした状態では確かにフラット、個人的にはもう少し下げても面白いとは思います。最大ももう少し多くしてもいいのかと思いますが、破綻がない範囲内での利用なのかもしれません。
普段はちょうど真ん中くらいに設定して使う事が多いですね。Hip-Hopはテクノ系は低音最大にするととても気持ちいい、ライブで感じる揺るがすような低音も感じます。
最初にも書きましたが、現状では最も優れた低音を出す機種だと思います。


ローパスがきつめに働いてる影響か、中低音がよく言えばスリム、悪く言えばやせて聞こえます。中音へのかぶりとのトレードオフではありますが、ダイナミックドライバーやマルチBAにあるようなふくよかな中低音が好きな人には合わないでしょう。


試聴の際の注意点ですが、低音ドライバーユニットに搭載されている背圧機構の影響で密閉が完璧でないときでもそれなりに鳴らす事が可能です。しかし、完璧な密閉を得られる場合と比べ幾分も質が落ちるものです。視聴時にはその点を考慮においていた方がいいかもしれません。


中音はわりと珍しく、頭の真ん中でくっきりと声を描くような印象です。
Sensaphonicsの2XSに近いイメージで、女性ボーカルをしっかり聞き取りたい時などには最高だと思います。ギターも鮮やかでキレがいいですね。ただ先に書いたとおり、中低音がすっきりしているので、バスの男声などはやせた印象になることがあります。
8KHz付近のピークの影響もあってか、ボーカルが刺さるように印象を覚えることもあります。ただ、この中高音の刺さりは他のユーザーからは聞かないので、この個体固有のものか耳の形状との相性的なものなのかもしれません。
それ以外の高音は刺さらずにうまく伸ばしています。個人的には量的にすこし物足りないですが、一般的には十分だと思います。
FKを使った時にありがちな歪み感や雑な印象がないのはなかなかすごいかなと。
変なディップやピーク等はないので、嫌う人は少ないと思いますが、特筆すべき点もないというのが正直なところ…
高音だけインピーダンスが低いらしいので、アンプの性能を如実に受けるのかもしれません。


全体的には、すっきりとした印象の音です。
エッジを感じるような音ではありませんが、多ドライバー機種のような濃さはありませんし、ハイブリッド機でありがちな中低音がこもるようなこともありません。
音場は、低音は広がるように、中音は真ん中にびしっと、高音は少し狭めでしょうか。
トータルで見ると、かなり個性的な音だと思います。これがメーカーのリファレンスだと言われると、やっぱりくみたてLabってちょっと変わったメーカなんだなぁと思いますね。


付属品

標準ケーブルはなんというか、必要最低限という感じです。柔らかいので取り回しに困ることはないでしょう。
ケーブルの影響を受けやすい機種だと思うので、リケーブルでだいぶ遊べるかもしれません。
低音調節機構用に小さなマイナスドライバーが付いています。これは先細りの形状なので、ちょっと使いづらいかもです。ロクサーヌに付属していた同等品は先細りではないのでそっち方が使いやすいと感じます。

 

 

まとめ

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何度も書いていますが、現時点で知る限りカスタムインイヤーモニター史上最高の低音を出す機種だと思います。
今の価格においては非常にコストパフォーマンスに優れているので、もし興味がある場合は購入を強く勧めます。

 

Vivaldi Browserという、僕たちのための、僕のためのブラウザー

Vivaldi 1.0 がリリースされたのちょっと書いてみます。

 
2年前の記事OperaOperaの魂を失ったという話をしましたが、ついにその志を受け継ぐブラウザーがリリースされました。
 
かつてのOperaを取り戻そうと精力的に開発が続けられ、ベータ版を利用したユーザーも積極的に報告をしリリースに至っています。
 
以前の記事にも書いたとおり、かつてのOperaはひどいものを正式版としてリリースしたことは(よく)ありました。(この傾向はVivaldiでもやはり変わりませんでした)
大手サイトが利用できない・日本語が利用できないことはよくありましたし、起動すらままならない状態でリリースしたことすらあります。
それでもそれがユーザーが望んたOperaであることには違いありませんでした。
Operaがユーザーを裏切らない限り、僕はOperaのファンであることをやめなかったでしょう。
しかし、Operaはユーザーの声を聞くことをやめるとでも言うように、ユーザーコミュニティーのサイトを閉じました。
 
Operaがそのユーザーコミュニティーサイトを閉じたとき、(すでにOpera社を去っていた)Opera創業者のテっちゃんは、ブラウザーファンのためにコミュニティーサイトを立ち上げました。
そのときはまだブラウザーを作るとは言っていませんでしたが、淡い期待を抱かせる何かを確かに感じました。
 
そして2015年の1月、Vivaldi ブラウザーの開発がアナウンスされて以降、次々と出される開発中のVivaldiはとてもワクワクさせるものでした。
機能も足りない、まともに動かない、そんなものばかりでしたが、Vivaldiが僕たちのために一所懸命開発しているということはとても良く感じられましたし、だからこそ自分もVivaldiに何かをしたい、Vivaldiと一緒に何かをしたいと思わせるものがありました。
僕が愛したブラウザーは、Prestoエンジンでも無く、ビジュアルタブでもなく、メーラーでもなく、マウスジェスチャーやキーボードショートカットでもなく、User CSSでもなく、そういった機能じゃ無いところ、ユーザーとメーカーがお互いを信頼して裏切らず密にコミュニケーションを取って開発されたものだと言うことが改めて実感しました。
誰のためでもなくただ自分が使いやすいように作り込んでいけるブラウザー、そしてユーザーとメーカーが互いを尊重し合い一緒に開発を進めていく姿勢がそこにあります。
 
Vivaldiは非常にカスタマイズ性に優れ、ITに良く慣れた人ほど感心させられる機能がたくさんあります。
Vivaldiは明らかに上級者向けのブラウザーですが、いったん手に馴染むと手放しがたい操作感があります。
それはまるでプログラマーが自分のエディターをカスタマイズし自分の利用法に最適化するような感覚で、ブラウザーを使う目的に最短で到達出来るように個々人で作り込む事が出来ます。
そうやって作り込みんだ、愛着のあるブラウザーは僕にとってとても価値のあるものです。
それを、かつてのOperaのように失いたくないと思います。
それはきっと、VivaldiがVivaldi ブラウザーの標語である「友人達のための新しいブラウザー」という言葉の意味を忘れない限り、失われることはないと信じています。
また、Vivaldiがそうであり続ける限り、僕はVivaldiのファンであり続けるでしょう。


間違いなく、これが僕たちが愛するブラウザーです。これこそが"Vivaldi"です。
 

くみたてLab KL-REF が届きました

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低音調節機構付きで、クリアシェル、ソフトカナルオプションです。

クリアシェルの透明感は過去最高かもしれません。

外観は素晴らしいですね。

音に関しては諸事情によりもう少し後になりそうです。

オンキヨーの超短納期カスタムIEM、IE-C2受け取りました

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購入時の納期ぴったり10日で届きました。

2ドライバーの機種です。

シェルカラーはブロンズ。フィット感の調整は一番きつめの設定にしています。

 

圧迫感のないストレスフリーの装着感は過去最高かもしれません。

反面、遮音性は低く感じます。

 

音については、今のタイミング悪く風邪を引いているので後ほど…

FitEar 萌音17歳(Monet17)

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先日発表された萌音17歳ですが、2年前のこの記事でレビューしたチューニングが実は萌音17歳と同じものだったらしいです。

it.hatenablog.jp
 
うちの萌音さんは時をかける少女だったということで、参考までにどうぞ。

Sensaphonics Musician's Ear Plugsはカスタム耳栓で最高の選択肢かもしれない

Sensaphonics(センサフォニクス)社のシリコン製カスタム耳栓、Musician's Ear Plugsのレビューです。


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# うんちくや寄り道が多い長文レビューです。苦手な方はご注意を。

以前のレビューでFiEar Silenceというカスタム耳栓を取り上げました。
it.hatenablog.jp
自分の耳の形にぴったりフィットした柔らかい耳栓で、圧迫感や痛みがなく長期間安全に聴覚を守ることが出来るということでオススメしていたのですが、どうにも大きく口や首を動かしたときに密閉が外れるという問題がありました。
落ち着いたコンサートや電車・バスなどであればそれでも問題無いのですが、跳んだり跳ねたり手を振ったり笑ったり歌ったりと忙しいライブの場合に密閉が不完全になる瞬間がある事が不満でした。

そこで、カスタムインイヤーモニターのメーカーとして最古参であり、シリコン素材のイヤーモールドで最も多くの経験を持つであろうSensaphonicsのカスタム耳栓、Musician's Ear Plugsを試してみました。
Musician's Ear PlugもFiEar Silenceと同様に音響フィルターを使用し、音質を損なう事なく音量を下げられる耳栓です。
Musician's Ear PlugではER-4Sで高名なEtymotic Research社製のフィルターを使用しており、-9db・-15db、-25dbの三種類があります。
今回はライブでの使用がメインなので-25dbを選びました。このフィルターは後から個別購入することも出来ます。

Sensaphonicsのカスタム耳栓は現在公式サイトからの注文のみで、耳型採取も指定の補聴器店のみで受け付けられています。
価格も耳型込みで35000円近くと高価で購入には少し敷居が高いですが、先の不満点は完全に解消しました。Sensaphonics Musician's Ear Plugs、とても素晴らしい製品だと思います。


早速FiEar Silenceと比較してみましょう。

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耳栓の造形の違いとして、Sensaphonicsの方がヘリクス部が薄く長いです。
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カナル部もより長く、そして音導管が太く作られています。f:id:impracticable_theory:20150322214626j:plain:leftf:id:impracticable_theory:20150322232607j:plain

音導管が太いということは、相対的にカナル部が薄くなっていますね。
この"薄い"というのが装着感の大きなポイントになっています。同じ固さの素材であれば薄い方が柔らかく感じるので、Sensaphonicsの耳栓の方が圧倒的に顎や首の動きへ追随するようになっています。カナル部が長く太いことも相まって、みっちりはまってぴったり動かない、という印象ですね。
また、音導管が太いので高音の減衰も小さくなっているでしょう。
造形自体も耳に対して正確なようで、耳栓の全面で保持できているのか、寝てるときに使っていても痛くなりにくいです。
長いカナル部が影響しているのか、遮音性自体もSensaphonicsの方が高いように感じます。
これらの優位は、20年以上に渡るSensaphonicsの経験と哲学に裏打ちされたものだと思います。
ただし、通常のMusician's Ear Plugsはヘリクス部はありません。カナル部のみが基本の構成です。私がヘリクス部があった方が好みなのでオーダー時に指定したものになります。イヤーモニターと同じ作りにすればそっちを買うときの参考になるかという目論見もありました。


そもそも同じシリコン素材で、同様に優秀なフィルターを使用し音質を損なわずに音量を下げるという非常に似たコンセプトの製品でなぜこれほどの違いがでるのでしょうか。

そのためにまず耳の中について調べてみましょう。

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これはカスタムのイヤモニや耳栓を作る際に取得する耳型です。
ここの1(赤)の部分が耳穴です。カナルとも言われます。このカナルに挿入するタイプのヘッドホンを一般的にカナル型イヤホンと言われていますね。
耳穴に入ってすぐに曲がりがあり、これが第一カーブと言われています。2(紫)の部分です。
その後、細くなりつつ奥に向かい、急にまたカーブを迎えます。これが第二カーブを言われます。3(橙)の部分です。
第二カーブ以降は急激に細くなり、鼓膜へと向かいます。

この第二カーブ以降ですが、実は頭蓋骨の中に入っています。そのため皮膚が薄く非常に敏感です。耳かきなどで奥に触ると痛みやえずき・咳が出ることがありますが、そのときはこの第二カーブ以降に触れています。
また、皮膚が薄い上に直下に骨があるため、圧迫されると神経や血流が阻害されやすい場所でもあります。
なので、補聴器やカスタムイヤーモニターを作成する際にはカナル部をこの第二カーブまでの長さに、長くてもその先2ミリ程度に抑えるのが定石です。

しかし、耳穴の浅い部分を密閉させた場合、耳閉塞効果という現象により自分の声の低音部が強調され不快に感じることがあります。
自分の指を耳に入れて声を出すと分かりますが、声の低い所が響いて聞こえます。このため補聴器やステージ上でのイヤーモニターの使用を嫌う人もいます。
ところが、さらに奥に指を入れるとこの耳閉塞効果は低減されます。つまり、第二カーブより先まで補聴器やカスタムイヤーモニターのカナル部を伸ばせば、耳閉塞効果を少なくすることが出来ます。

ただし、先の危険を伴うため、補聴器ではカナル部を長くするのではなく最近は耳穴を密閉させないという手法をとっているようです。
カスタムイヤーモニターにおいては、ステージ上でのモニター用途の場合も同様に短めのカナル部を使用し、強調される低音部をイコライザーで低減させることで耳閉塞効果が気にならないようにしているようです。
これは、自分の声よりもマイクを通してカスタムイヤーモニターに帰ってくる音の方が大きいという状況をうまく利用したもののようです。
ただし、オーディオファンがカスタムイヤーモニターを使う場合は、使用しながら話すことはないと思うので、耳閉塞効果の影響は考慮する必要はないでしょう。


しかし、より効果的に耳閉塞効果を低減させるためには第二カーブ以降までカナル部を伸ばす手法は未だ有効です。
そこにフォーカスしたメーカーがSensaphonicsです。
Sensaphonicsでは柔らかいシリコン素材を利用することにより、第二カーブ以降の痛みを感じやすい部分でも快適に利用出来るようにしています。
Sensaphonicsのメインターゲットはステージ上のボーカリストです。そのため、口を動かしても決して密閉が外れず、耳閉塞効果で不快になることが無いように設計されています。

え、でもFiEar Silenceもシリコン素材じゃない。という疑問がありますが、それはカスタムのイヤーモニター・耳栓の製法が影響しています。
耳栓やイヤモニを作る際には先の耳型を使用し、まずそれのメス型を作ります。そのメス型にカスタムイヤーモニターを形作る素材を流し込み固めて作ります。

その際、FitEarでは耳栓やイヤモニを作る用のメス型を作る時点で不要なヘリクスやカナルの先端などの部分を削り(トリミング)ます。その後のシェル作成で密閉の肝になる部分の厚みを増して装着感を調整していきます。
対してSensaphonicsはトリミングは一切せず、そのまま一回り二回り大きく太くします。
ここが両者の大きな違いです。なぜなら、FitEarは基本的には固いアクリルシェルでの製造を行うメーカーだからです。
どっちが良いとか言う話ではなくて、固いアクリルシェルを作るには痛みや危険を避けるためにトリミングは必須で、カナル部は短く作ります。
柔らかいシリコンで作るのであれば、そのリスクが少ないためにトリミングせずに耳型に忠実に作れるのです。
要所要所で密閉を確保するアクリルシェルと、ぴったり全面を密着させて密閉するシリコンシェルの違いですね。
ただFitEarは基本的にアクリル製造のメーカーなので、おそらくシリコンの耳栓を作るときでもアクリルと同様のメス型を作るんじゃないかと思います。
FiEar Silenceを作った際も耳型を再採取しなかったので、以前のメス型を利用しているのでしょう。
その前提があるので、同じシリコンのカスタム耳栓と言ってもこんなに違いが出ているのだと思われます。

また、カナル部以外の大きな違いとして述べたヘリクス部が薄いということですが、これは首や顎の動きへの追随に大きく貢献しています。
シリコンでカスタムシェルを作っているメーカーは他にもありますが、ここまでヘリクス部を薄く作るメーカーは見たことがありません。
これは10年ほど前にSensaphonicsで購入した2XSからみても大きな進歩です。当時はまだアメリカのラボで作成していましたが、今は日本にラボがあります。
おそらく、日本のラボで培われたノウハウなのでしょう。20年近くフラグシップは2ドライバーの2XSのままという頑固一徹なSensaphonicsですが、ドライバー以外の部分では進歩を続けているようです。

注意点として、カナル部が特に長く太いのは、そのように作ってほしいとオーダーしたからです。通常はここまで大きく作ることはないとSensaphonicsの方も仰っていました。
しかし、例外的なオーダーでも完璧なフィットで提供するのには職人魂を感じます。


やたら褒めましたが、Sensaphonics Musician's Ear Plugsにも使用に厳しい部分があったりします。
実はこれ、めちゃくちゃ装着しにくいんです。ぱっとつけるのは無理ですね。
柔らかでぐにぐに動くしワセリンとかないとまず片手ではつけられません。まぁ、はまると動かないって事は入れにくい出しにくいって事ですよね。
なので、すぐに外すというのも難しいです。
また、品質というか見た目の綺麗さではFiEar Silenceがずっと綺麗です。Sensaphonics Musician's Ear Plugsではコーティングのむらや削り残しのような部分がややあります。
装着には影響はないですが、少し気になる部分ではあります。


さて、長々と書きましたが、結論としてはタイトルに書いたとおり
Sensaphonics Musician's Ear Plugsはカスタム耳栓で最高の選択肢かもしれない
です。
耳栓を付けたいけど痛みがあってつらいという方、耳栓使用時の会話に困難を感じている方、既存の耳栓に不満がある方、なんとなくカスタム耳栓を買ってみたい方、是非ともご検討ください。
強くオススメ出来る製品です。


技術的な部分の記述に関しては各メーカーの中の人にお聞きした内容、またそれぞれの各メーカーサイトを参考にしています。
誤りがある場合は平にご容赦を…

AK120BM+ (AK120の2.5mm4極バランス化改造) のレビュー

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AK120BM+は、AK120をAK240やAK120 IIのような2.5mmバランスに対応させる改造サービスです。
詳しくはサービスページを参照してください。
http://www.elegadgets.com/index.php?dispatch=products.view&product_id=317


「AK120 IIが出たけど、DAC変わるのは音も変わるから今のAK120が好きならまだいいにしろ、バランス対応っていいなー。でも20万は高すぎる…」
とか思っていたら、elegadgetsさんでAK120のバランス化改造が出来ると知って思わずお願いしてみました。


結論からかくと、改造のメリットはしっかり感じられとてもお勧めできるサービスです。



AK120BM+ではAK120のデジタルイン端子を2.5mmのバランス出力端子に入れ替えます。ピンアサインはAK240等と同じなのでケーブルに互換性があります。
置き換えのために外観的な変化はほとんどありません。外寸は全く変わらず、こっそりアップデートしても嫁にバレる心配もありません。
個人的にはプレイヤーはポケットに入るかが最も重要なポイントなのですが、そこを担保出来るのはとても素敵です。

2.5mm4極コネクターですが、かなり硬めに食いつきます。というかちょっと硬すぎてプラグ側のメッキがそのうち剥がれるんじゃないかと思ったりもします。そのぶん不意に外れない安心感はあります。


デメリットとしては、改造なので当然ながらメーカーの補償が無くなることが最大です。
2.5mmプラグは光入力端子の置き換えになるので、光入力は使えなくなります。
また、イヤホンを抜くと音楽の再生が止まる機能は2.5mmプラグ側にはありません。
これが地味につらいところで、たびたび再生させっぱなしにしてバッテリー切れにしています。
出力抵抗が下がったためか音量が取りやすくなっています。そのため曲が変わる際のプチッというノイズが結構大きくなってしまいました。また最小音量が上がったのでもうちょっと音量下げられるといいなと思うときもあります。


しかし、音質的な向上はそれらのデメリットを上回っておつりがくるレベルです。
一聴して全体的な解像度の向上が分かります。
全体的に駆動力が向上しているようで、オーディオでよくありがちな表現ですが、本当に幕が取り払われたような印象です。

特に低音部は顕著で、今まで真ん中をあたりでもやもやしていた低音がバッチリ定置が決まって輪郭もくっきりします。
おそらく、出力抵抗をL/Rアイソレーターに変更し出力インピーダンスが大きく下がった事が影響していると思います。
改造前では低音の緩さが気になってアンプやトランスの導入を検討していたんですが、BM+になってからはその必要はあまり感じなくなりました。
イヤホンの相性としては、萌音(2013夏)がとてもよい方向に変化しました。バランス化らしい分離の良さはもちろんですが、少し重たかった低音のキレがよくなり、高音も鋭く分離しボーカルもくっきりします。

反面、もともと空間表現が得意なRoxanneは極端な変化は感じられませんでした。
最近Roxanneの利用率が高かったのですが、BM+にしてからは完全に萌音(2013夏)がメインです。この組み合わせでヘビーメタルを聴くと最高に気持ちいいですね。

AK120にここまでの実力が隠されているとは思いませんでした。はっきり言って3,4万円台のアンプを足すのであればBM+にしたほうがいいと思います。何よりサイズに変化はないですし。


バランス化に際しては、同じくelegadgetsさんでFitEar用のバランスケーブルを用意してもらいました。
最近ありがちな高額路線ではありませんが、音質的には十分で取り回しも良かったです。
Roxanne用には海外から純正の2.5mm4極ケーブルを個人輸入しました。
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おそらくAKR03のケーブルと同じと思われますが、日本以外ではまだ在庫があるようです。AKシリーズの人気は日本国内に偏っているのかもしれません。
そのうちMMCX用のケーブルも入手してIE800リシェルでも試してみたいと思います。


ということで、AK120BM+はとても満足です。
改造というある程度リスキーなサービスではありますが、メーカー補償なんてなくてもいいぜ!AK120の音は好きなんだぜ!もうちょっと音質向上させたいけどアンプ足すのはサイズ的につらいぜ!という方はぜひご検討を