impracticable theory 机上の空論

ポータブルオーディオ 主にカスタムイヤーモニター

そして再び消える魔球

このレビューは製品レビューではありません。
タイトルを見てわかる人もいるかと思いますが、サービス化されるか不明な段階でのレビューです。
記載に際して須山さん本人に許可はもらっていますが、正式発表があるまでFitEarに問い合わせても回答はないと思われます。
もしかすると無かったことになるかもしれませんので、夢をみた程度の感覚で読んで頂ければ…



じつはたびたび手を加えられているFitEar Monet (萌音)ですが、かなり大きな変更があったのでレビューしてみます。
正式メニューになるのかならないのか、そのあたりはまだ不明であくまでベータテストの報告という程度なのであまり期待なさらず…


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シェルが濁って見えるのはフィルターをかけちゃったからですね

見た目はヘリクス部に大きなナニカが追加されています。小型のBAドライバーくらいのサイズはありそうです。それ以外の変化は特になさそうに見えます。
この大きなナニカ、須山さん曰わく昆布巻きらしいですが、これの効果か凄まじい変化がありました。実にいい味出してます。


萌音というと以前のレビューで酷評したように、非常に強いローと隠れがちで繊細なハイ、少し引いたミッドとなかなか難しいバランスでした。
自分でもレビューは甘口派だと思っていますが、それでも汎用性を考えると褒めるのは難しい印象でしたね。
以前書いたレビュー以後、高音に調整が入ったり自分で音響抵抗を変更したりとだいぶフラットよりになり、好みに相当近づいたのですがまだ汎用性に欠ける(また、ボーカル主体のアニソン向きであるとは言えない)という全体の傾向は変わりませんでした。


今回のバージョンアップ後はローからミッドにかけてかなり大きな変化があります。
まず目に付く点として、低音の量が減っているため、相対的にボーカルレンジから高音が目立つようになっています。
以前は高い解像度とはいえ重たい印象の低音がベターっと空間を埋め尽くして、その中から他の音が聞こえるというような印象でしたが、バージョンアップ後はローの全体的な音圧が減り、まるでダイナミック型のような分離と立体感を備えるようになりました。
それでいてBA型の特徴である解像度は失わず、むしろ分離感が向上したためか一つ一つの音が聞き取りやすくなっています。
もともと(000ケーブルの効果も大きいですが)左右のセパレーションは優秀な機種でしたが、バージョンアップ後は左右の距離感や前後の音場をしっかり感じることが出来ます。
パーカッションの位置関係やコーラスの折り重なりがまるで目で見えるように感じられます。
弾力があり弾むような低音で、BA型では聴いたことがないイメージですね。

このあたりの印象がかなり変わっているので、アップグレードではなくバージョンアップと表記しています。
萌音の再調整版というより、333の系譜である334DWといった方が適切なんじゃないかと思うほどの変化です。
ケーブルの相性も変わり、001ケーブルとの相性はなかなかです。付属を000から変更したらちょい安くなるかも!?

以前のようなエッジが立ったキレキレの低音ではなくなっているので、現行萌音がすばらしく好みだ!という方には明らかに馴染まない音になっています。ぶっちゃけると自分は以前のキレッキレのサブローの方が好きだったりします。
そういう方はバージョンアップサービスとかが正式メニューになったとしても手を出さない方がよいと思います。


しかし、全体的にみると汎用性が相当向上しています。
低音が減ったためか、少し引いていたボーカルがくっきり前に出るようになってきました。
以前はアニソン専用機を謳っている割にはボーカル曲には弱く、古めのアニソンが合う程度だったのですが、バージョンアップ後は最近の音数の多いアニソンにも十分に対応出来ると思います。
ローからミッドにかけての分離感が素晴らしく高いため、ビッグバンド構成なんかもとても楽しいです。
反面、ゴリゴリな低音のサウンドは低音のエッジ感が減ったのでやや苦手になったかもしれません。
また、プレイヤーのボリュームが上げやすく、つまり感度が低くなっています。アンプを使用する際に扱いやすくなりましたね。


音響抵抗による調整も自分でいろいろ試してみましたが、個人的にはツインツィーターを限界まで活かすように高音用ドライバにはほとんど音響抵抗を設置しないセッティングがかなり好みです。もともと高音の歪みなさというか解像度は素晴らしいものがあり、超高音の音圧維持も他にはないレベルだったのですが、それを余すことなく感じる事が出来ます。
また重く眠かったギターなども鮮やかに聞こえてとても楽しくなりました。

好みはそれとして、一般的にはもう少し高音を押さえた方が良いかもしれません。
二つの高音ドライバーの両方に音響抵抗を設定すると結構低音よりになるので、音を詰めるには高音ドライバー側のネットワーク的な調整も追加で必要なのかもしれませんね。
このあたりの調整も含めて、トータルでどのような音をなるのか楽しみです。
正式メニューになるかどうかはまだわかりませんが、その際にはきっとさらに完成度を高めてくれるはずです。



はっきりいってこのバージョンアップ後はMHシリーズに比肩しうる性能があると思います。
MHシリーズのようにスピーカーで聴いているような音を出すわけではないですが、頭を中心に立体的な音場で解像度が高く、まさしくイヤーモニターと言うべき音を奏でます。
既存の萌音の延長線とは言えないですが、オリジナリティあふれ、汎用性も高いです。
というか、これを最初からリリースしていたらヒットしていたんじゃ…
もしくはアニソン専用機と言わず別製品で出せば二倍儲けられるチャンスですぜ、須山さん!

冗談はともかく、一年ほどの間に大きな成長をみせた萌音、そしてこれから出るであろうFitEarの新製品(?)はイヤーモニターとしてもう一段階上のクオリティに仕上がりそうで楽しみです。