impracticable theory 机上の空論

ポータブルオーディオ 主にカスタムイヤーモニター

快適な難聴対策の耳栓 - FitEar Silence

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今回のレビューはFitEar製品ですが、カスタムイヤーモニターでもユニバーサルのイヤモニでもありません。
FitEarにおいてはイヤモニよりも歴史のある耳栓についてです。


FitEar Silence公式サイト
http://fitear.jp/silence/index.html



耳栓といってもそこはFitEar、個人の耳型にぴったり合ったものです。しかもフルシリコン製です。
イヤモニのSKUにはシリコンのものはありませんが、このFitEar Silenceはフルシリコンが基本となっているようです。


FitEar Silenceには様々なオプションがあります。
外観的なところでは、豊富な種類のカラーが選択できます。
http://fitear.jp/silence/color.html
(このあたりはFitEarのイヤモニのラインよりも優れているポイントですね)
また、シリコンではなくイヤモニと同じアクリルを使用したハードシェルの耳栓も作成できます。シリコンの方が装着感はよく、あごや首の動きがあってもシリコンの柔らかさで動きに追随でき遮蔽が落ちることはないのですが、装着のしやすさなどでアクリルを選ぶ人もいるようです。
(シリコンの場合特に耳穴に入れにくくなることが多く、装着時にワセリンなどを塗って滑りやすくすることが推奨されています)
また、シェルの造形もヘリクスまで含んだフルシェルタイプのほかにカナル部だけのものも作れますし、取り外ししやすいようにとっかかりをつける事が出来ます。このとっかかりには穴が空いており、落とさないようにひもを結んでおくこともできます。
また、左右の区別をつけやすくするために右側に赤い印がつけられています。
このあたりは流石に補聴器での実績が豊富なFitEarというところでしょう。


そして、最大の特徴は音質に影響を与えずに音圧(音量)を下げるフィルターを搭載出来る点です。


通常の耳栓の場合、スポンジやシリコンなどの素材で作られている事が多く、高音の減衰が激しく耳栓をつけるとこもって聞こえてしまいます。
一方、FitEar Silenceに採用されているフィルターは、明瞭感を損なう事が無くまるでスピーカーのボリュームを絞ったように感じられます。


以前からこのFitEar Silenceを愛用していたのですが、新しいフィルターを採用したものを入手しました。
以前のフィルターと比較した場合、低音の減衰がより強くなっているようです。また高音に少しアクセントを持たせているようで、これが全体的な明瞭さに大きく影響していると思われます。



旧型フィルター搭載FitEar Silence

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旧型フィルター搭載FitEar Silenceは高音の減衰が比較的大きいため、騒音環境下で人の声を聞き取る必要がある場合にはとても有効です。
オフィスで仕事をしている時にコレを装着すると周りのガヤガヤやキーボードのカチャカチャ、PCや空調のファンの音などが消え去りとても快適な空間になります。
それでいて人の声はしっかりと聞き取ることが出来るため、業務を妨げることはありません。
また、コレを作る際に出来るだけコンパクトに作ってもらったので、バスや飛行機の中など比較的うるさい環境で寝るときには重宝します。
一方、ライブなどでは高音の減衰の強く少しモヤっとするのが気になっていた時に出会ったのが新型フィルター搭載FitEar Silenceです。

新型フィルター搭載FitEar Silence

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先ほどとは全く異なる形状のフィルターを採用います。
もしかすると、このフィルターはどこかで見たことがある方もいらっしゃるかもしれません。
最近取り扱い店舗も増えてきたCRESCENDOの耳栓と同じフィルターを使用してるようです。
またJH AUDIOの最新機種Ambient FRにもこのフィルターが搭載されています。
このフィルターの特徴は、積極的に帯域に応じて低減する量を調整する事により聴感上のフラットさを目指している点です。
CRESCENDOの耳栓にはいくつかのタイプがありますが、たとえばドラマー用のフィルターでは全体の減衰率が最も大きく、また高音の減衰が比較的大きく取られているようです。
ドラマー自身が音源の一番近くにいるため、大音量から耳を守りつつ全体として音を聞き取りやすくなるように設計されています。
ボーカル用のフィルターでは中音以降の減衰が少し小さく、声を聞き取りやすいようになっているようです。
各フィルターの特性についてはグラフがあるので調べてみてください。
ただ、FitEar Silenceには業務用途と一般ユーザー向けの製品があり、これらのフィルターを選択できるのは業務用途のみです。
ですが、一般ユーザー向けのFitEar Silenceは一種類のみのようですがそれでも効果は十二分に体感できると思います。


さて、新型フィルター搭載FitEar Silenceを実際にライブ会場で使用してみました。
今まで旧型フィルターのFitEar Silenceではややこもって聞こえていたのですが、新型フィルターでは完全に払拭されています。
聞こえ方は非常に自然です。こういったライブハウスなどでは低音と高音をかなり持ち上げて刺激的な音にしていることが多いですが、それがフィルターを通すことによってフラットな自然な状態に近付いているようです。
また、旧フィルターでは周りの様子が分かりづらく疎外感を感じるという問題があったのですが、それと比較すると周りのざわつきや話し声などもきちんと聞き取れます。
あまりに自然で、耳栓をつけないとどんなものなのかと試しに外してみると、あまりの音量の違いにびっくりしました。とても耳栓なしで耐えられる音量ではなさそうです。
ライブ会場では、とくにスピーカーの近くではあまりにも音量が大きすぎるために逆に聞き取りづらいということが多々あります。スピーカーの直前では120db以上に達することもあるので当然でしょう。
この音量を2,3時間も聞いていると聴力に影響がでるのは間違いありません。
その点、FitEar Silenceを使用すると20〜30dbを低減でき、安全に聞こえる範囲が広くなります。
音量と時間に応じた聴覚へのダメージは以下を参考にしてください。
http://www.entry-japan.com/j/medi/hearing_loss.html

ライブなどでは最悪7分で難聴になる可能性があります。
適切に耳栓を付けていれば、この問題を大幅に軽減することができます。
また、先ほども書きましたが爆音よりも音量を抑えたほうが聞き取りやすいので、アーティストの音を正確に聞きたいのであればなおさら耳栓は必須だと思っています。




FitEar SilenceやSensaphonicsのMusician's Ear Plugs等のカスタム製品ではなく市販のCRESCENDOやER-20などでもいいかもしれません。
どちらも優れた音響設計で適切に音質を保ったまま音量を下げることができます。
ただ、ユニバーサル設計のため、多くの人には装着に痛みを伴うと思われます。実際に僕自身もこれらのイヤーピースの使用は耐えられません。
また、サイズが合わない場合は密閉できずに本来の性能が発揮できず難聴対策の役に立たないという場合もあります。
装着できない耳栓にはなんも意味もありません。そういった人にはFitEar Silenceはとてもよい選択肢になるでしょう。
ただし、個人の耳型にあったオーダメイドのものなので、それなりのお値段はします。オプション次第で金額は変わりますが、2万円以上するものです。



まとめ的なもの

一度失った聴力は現在の医療では回復できません。出来るだけ自分の耳は大事にしたいものです。
僕はライブなどの騒音環境下に行くときは同行者のための予備の耳栓を持って行くようにしています。
ライブの後に耳鳴りがしたという経験は無いでしょうか。それは難聴の症状です。耳鳴りがひどい場合は急いで耳鼻科に行ってください。一生の聴力がかかった問題です。
そして、是非とも耳栓の使用を検討してください。


出来れば一生、補聴器でFitEarのお世話にはなりたくないものです。
音を聞くということを考えるとこのFitEar Silenceは、あるいはイヤーモニターよりも重要な製品ではないかと考えています。
積極的に耳を守るという発想、これから浸透していくといいなと思います。




最後に、普段イヤホンやヘッドホン、スピーカーなどで音楽を聴く際も音量は控えめに!
知らず知らずのうちにかなりの音量まで上がっているかもしれません。
セーフリスニングの精神を忘れないようにしたいです。

http://safelistening.net





Sensaphonics(センサフォニクス)社製のカスタム耳栓、についてもレビューを書きました
it.hatenablog.jp