impracticable theory 机上の空論

ポータブルオーディオ 主にカスタムイヤーモニター

アリエルとオーディオ

この記事はAriel Advent Calendar 2011の20日目です。



突然ですが、いまアリエル・ネットワークという会社で働いています。
そこでAriel Advent Calendar 2011というイベントをやっていて、参加することになりました。
Ariel Advent Calendar 2011とはなんぞや、という方はとりあえずリンク先をみてください。


一年以上ブログを放置しておいて、なんでいきなりこんな記事を書き始めたかというと、自分でも何がなんだかよくわからないですがおそらく社風が影響してるんじゃないかと思います、きっと。


* この記事は今までと文体が明らかに違いますが、あえて変えています。
業界的な言い方だと、「仕様」です。
途中で文体が若干変わるのは仕様変更です。




さて、この記事ではアリエルとオーディオの関係について書こうと思います。
アリエルとオーディオ、なんの関係もないじゃないかと思ったそこのアナタ!
それは大きな間違いです。
アリエルとオーディオが密接に結びついているということは客観的に立証されています。


https://www.google.com/adplanner/planning/site_profile?hl=ja#siteDetails?identifier=ariel-networks.com&lp=true
これはアリエルのホームページの分析結果です。サイトに訪れる人がどんな傾向にあるか分析してくれる便利なツールをつかってます。


ここの「ユーザー層の興味/関心」という項目をみてください。
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なんと3割以上(2011/12/20現在)の人がオーディオ機器に興味があるという結果になっています。

アリエルのホームページに訪れている人は、LinuxUnixや開発ツールよりオーディオ機器に興味をもっているのです。
アリエルではプログラマーが主役であると公言しているというのに、それよりオーディオ機器が注目を集めているのです!


twitterやamazonを調べてもオーディオ機器が上位にくるのでweb全体の傾向ではないかという意見が極一部にありますが、アリエルのホームページに訪れる人がオーディオ機器に強い関心を示しているという事実に変わりはありません。
もはやアリエル=オーディオ機器と言っても過言ではありません。




では、そのアリエルに勤めている人はどうなんでしょう。
ぱっと事務所内を見渡しても仕事中にイヤホンやらヘッドホンをつけている人がちらほらいます。
でもけしてサボっているわけではないのです。集中力を高めるための一つのテクニックなのです。たぶん、きっと。


中には、Porta Proを使用していながら音漏れを全くさせないという驚異の感度の耳を持った強者もいます。
Porta Proを知らない人はスピーカーとヘッドバンドだけになったヘッドホンをイメージしてください。


他にはATH-ESW9を机の上に放置している猛者もいたり。こっそり持って帰ってやろうかしら
ATH-ESW9を知らない人は漆のお椀を耳に付けている人をイメージしてください。それが@kirisです。


ポータブルアンプを使い込んでる人も三人ほどいます。
そのうち二人は初めてポータブルアンプを聴いた翌週には購入してました。まさに大人です。
あ、たった今布教が功を奏してポータブルヘッドホンアンプ使いが4人になりました。 試聴わずか5分で購入を決定してました。大人の極みです。
ポータブルアンプを知らない人はとりあえずfiio E1を買ってみてください。


開発部のディレクターはずいぶん長いことATH-CK10を使い込んでるらしいです。
ATH-CK10同じBAドライバを使っているUE700を持ってる人もいるので、そのうち両方とも借りて比較レビューをしてみようとか思ってます。
開発部ディレクターはK3003にも興味津々だったんで、そのうち買うでしょう。
K3003は自分ではそうそう買えない価格ですが、ディレクターならさっくり買ってくれると期待しています。


他にも、Shureの愛用者やShure掛けの愛用者とか、ノイズキャンセリングにこだわりをもつ人も複数人いますし、会社のイベントでのプレゼントがイヤホンだったこともありました。
そういえば、A687+Protector+JH13という組み合わせでお昼休みを一時間かっきり使い切る人もいるらしいですよ。



そしてアリエルのオーディオ好きはリスナーにとどまりません。
コントラバスを担いだ年齢不詳で笑顔が似合う素敵な御仁がいたりもしますし、そうそう、フジロック・フェスティバルのAVALONステージの大トリを務めたこともあるズクナシの人もいますよ!



最後に、最近アリエルが事務所を上げて取り組んでいるのが、オーディオ機器の除湿です。
アリエルの事務の湿度はかなり低く、昼間一日机の上にオーディオ機器を放置しておくだけでしっかり除湿され、鮮やかな高音が蘇ってきます。
唇がバキバキになり喉がかれて手荒れが進んでもオーディオのため乾燥を進めるという姿勢はアリエル一のオーディオフリークと他称される自分でも驚かされます。助けてください。


なんか最後は趣旨が違ったというか本音が出てしまった気がしますが、アリエルはこういう会社です。
アリエルはオーディオで支えられているのです。




さて、このAriel Advent Calendar 2011は25日まで続き、後5日残されています。
明日21日の担当はとってもラクしたそうな@stakamurさんです、お楽しみに!

元祖Ariel Advent Calendar 2011もありますよ!こちらもよろしく!

UM Mage レビュー

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3ウェイ3ユニット4ドライバ構成のカスタムイヤーモニター

コストパフォーマンス抜群で,カスタムとしては珍しい高音よりのバランスという前評判に惹かれ思わず衝動買いしたMageのレビューです。



インプレッションは須山さんでとりました。


余談ですが,インプレッションの際に鼓膜にシリコンが当たらないように入れるスポンジや綿球があるのですが,須山さんはその素材にもこだわっており現在は非常に負担の少ない素材を使っています。
低反発の柔らかいもので,耳に入れるときのゴソゴソにした感じが少なく快適です。
須山さんでインプレッションをとると5000円で左右一組と確かに高いですが,技術も使用する素材も優れたものがありますので価格に見合わないことはないと思います。


閑話休題


インプレッションを送ってからMageが手元に届くまで20日弱,納期以内の対応でした。
内容物は下の写真プラス100均で買えるような安いケースでした。

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UMの標準的なパッケージですね。


ケーブルはUMケーブルではなくESケーブルを注文しました。
取り回しはすばらしくいいですね。音質も十分なものがあると思います。
ただ,音場が狭い傾向にあるので音場を重視する場合はUEのケーブルに替えるリケーブル屋さんに作ってもらうかした方がいいと思います。



シェルに関しては,非常に透明度が高く美しい出来映えです。この透明度はほかのメーカーでは見ないですね。
自分のポリシーとして,シェルは無色クリア・フェイスプレートにカスタムアートもなしを可能な限りすべてのカスタムで通しているので今回もそうしています。
シェルの見た目に関しては全メーカー中最高に位置していると思います。


一方,フィット感に関しては残念な感じです。


UE10を須山さんでリモールドしたものがフィットが良好なのでそれとの比較を…

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左がUE10,右がMageです。


きつめのフィットが好きなのでドラマー向けのように大きめに作ってほしいと依頼していたのですが,小ぶりな造形になっていました。
カナル部が小さく短いので遮音性が低く座りが悪いです。また,ヘリクスロックも短いので安定性も欠いています。
非常にぐらぐらした装着感で満足のいくものではありません。特に右側が小さく,音質にも影響を与えるレベルです。


わかりにくいので線を書いてみました。
はてなのお絵かき機能意外と便利ですね。。

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写真で赤線がヘリクスロック,青線がカナル部です。
Mageが異様にヘリクスが短いのがわかると思います。

余裕ができたら須山さんでリモールドしてもらう予定です。



再び余談ですが,須山補聴器用語ではリモールドはフィット感の調整のための削りや盛りを意味し,シェルの作り直しはリシェルというそうです。
UMなどではシェルの作り直しがリモールドなので紛らわしいですね…


  • バランス

UMから送られてきた周波数レスポンスがこれです。
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バランスは,評価が安定するまでずいぶんかかりました。
初めて聞いたときは非常にファットな低音が目立ち,高音は物足りないものでした。
ファットといってもだらけた音ではなく堅いイメージだったので決して悪くはなかったのですが,高音よりとの前評判とはかけ離れたものでした。


200〜300時間ほどエージングに必要との情報があったのですが,高音よりに聞こえるようになるまで確かにそれくらいかかりました。


高音よりになったからといっても,ER-4のように顕著なものではありません。
あくまでフラットの範囲内です。
自分の中でフラットの定義であるUE10と比較してやや高音が目立つ程度で,あらゆるジャンルに対応可能なバランスですね。


ただ,カナル部が短く細いので内耳内での共鳴による低音の増加が顕著になっている可能性が高いです。
最適なフィットに調整するともうちょっと低音が抑えられるのではないかと思っています。


  • 解像度


Mageの最大の特徴は,高い解像度です。
E8の圧倒されるほどの解像度ではありませんが,カスタムIEMの中では随一の解像度を誇っているようですね。
パッと聴きで,これは!と思えるほどのインパクトはあります。


特にストリングスの詳細は鳥肌が立つほどのものを聴かせてくれることもあります。
高音域はさすがはTWFKといったところで,すべての音が精細に聞き分けることができ,それでいて一体感を失うことはありません。


低音もCI22955らしく堅く太くでTWFKの高音に負ける解像度ではありません。
もっといい音源で聴きたいと思わせる解像度でMageを買ってよかった!と思うポイントです。
アコースティックギターは是非聴いてほしいところです。


  • 高音


高音の鳴らし方は独特で,シャーンとどこまでも伸びるようなシンバルが印象的です。
UE10のような太くバシッと決まるようなものではなく,333のようなすっきりかつ鮮烈なものでもなく,TWFKのいいところを余すところなく聴くことができます。


高音よりといっても,破綻するほど強い音が出るということではありません。
ほかのMage所有者も言われていることですが,爽快感というのがぴったりのイメージですね。
パーカッションなどは聴いていて楽しくなるほどの爽快感と疾走感があり,ライブで聴いているような感覚になります。
非常に細かく・冷たい音のシャワーという感じです。
それでいて痛くならないのは絶妙に調整されているところで,UMの技術力は侮れないですね。


細かすぎる高音が耳についてちょっときついなと思うときもありますが,ほかのIMEで聴き直すと不満に感じるので贅沢なものです。


  • 中音


ボーカル主体の曲を聴く方もMageなら満足できると思います。
やや堅めで乾いた音ですが,少し浮かび上がって聞こえます。
高い解像度と相まって目の前で歌っているかのような印象を受けますね。
2XSが女性ボーカルを得意とするのであれば,Mageは男性ボーカルの方が得意なようです。


女性ボーカルは場合によってはディップにかかるのか少しもやっとして聞こえることがあります。
優しい音といえばそうなんですが。。。
また,音量をあげると早めに破綻してくるので爆音で聴くのはおすすめできません。(難聴対策では言うまでもないですが…)


  • 低音


高音よりという印象に違ってしっかりと音量は確保されています。
UE10よりは少ないですが,膨らんだりだらしなくなったりすることはないのでドラムやベースの分離はしっかりしています。


ヘヴィメタルやヒップホップでも十分に聴くことができる量はありますが,轟くような音は期待できません。
ベースは頭の中にぐっと押し寄せるような音場なので迫力はあります。
ER-4Sではコントラバスが物足りなく不安定に感じた弦楽四重奏もどっしりとした基盤ができるので安心して聴くことができます。
それでいて解像度は高いのでBASS,BASS,BASS,BASS,BASS&BASS!のようなコントラバスのみの曲も楽しく聴けます。
和太鼓なんかもおすすめですね。


  • 音場


音場は狭いほうですね。Mageで最大の弱点です。横方向はそれなりですが,縦は狭く立体感は絶望的です。
解像度が高く精細な音なのですが,音場が狭いため音がひしめき合って不快に感じることもあります。
UEケーブルなどに交換すればずいぶん改善するのですが,取り回しのいいESケーブルも棄てがたくなかなか難しいところです。



アンプとの組み合わせですが,picoとの相性はかなりいいです。
狭めの音場をpicoが保管し,解像度も高く聴いていてとても気持ちがいいですね。
The Shadowとの組み合わせはおすすめできません。音場の狭さが顕著でMageの持ち味を全然生かせていません。
音場が広めのアンプと組み合わせるのがいいようですね。


  • 総評


今なら日本円でトータル5万少しという金額で購入できるコストパフォーマンスは抜群です。
音質も他社のフラグシップに近いものもあり,非常に魅力的です。


だた,UE10やUERM(Reference)を持っている人には大幅な変化・向上があるわけではないので強いて買うようなものではないです。
高音よりという比較的珍しいタイプの機種ですが,上記の2機種からは(解像度を除き)弱点が目立つように感じるはずです。
ボリュームをあげすぎるのもおすすめしません。中高音は早めに破綻してくるので(いないと思いますが)ステージモニターとして使うことはできないでしょうね。


333とは好対照です。得意なジャンルもかぶりはしないので,使い分けることができます。
コストパフォーマンスは圧倒的なので,1代目のカスタムや解像度を重視される方には非常におすすめできます。



うん,買ってよかった!

Ultimate Ears In-Ear Reference Monitors

UEの新製品In-Ear Reference Monitorsに気になる一文が

http://ultimateears.com/en-us/products/reference-monitors#features


> Our Ultimate Ears In-Ear Reference Monitors provide up to -32 dB* of noise isolation and passive noise cancellation (* ask about our new soft silicone material option).


soft silicone material option


UEがシリコン素材のIEMを作ると!!!
続報求む!!

ACS T1 *New for 2010*

シリコンカスタムのことなら黙っていねぇ!
毎度のご挨拶は「お久しぶりです」のi_tです。


シリコンカスタムのACSから新たなるハイエンドの登場です。

http://www.hearingprotection.co.uk/index.php?option=com_content&task=view&id=124&Itemid=223


といっても新作ではなく,以前からあったT1の再設計ということらしいです。

3ウェイ2ユニット3ドライバ構成のT1ですが,その構成は変わらずドライバ(とおそらくネットワーク)を変更したようです。

ドライバはKnowles製で,低音はさらに強化され高音は以前のものより伸びると。
音場の強化も述べられていますね。


謳い文句を見ていると欲しくなって仕方ないですが、ACSのカスタムのケーブルを着脱出来ません。
ケーブルを着脱出来ない唯一のカスタムメーカーでしょうか?


しかしそれでも40Shoreという非常に柔らかいシリコンは魅力的です。



是非とも誰か人柱になってください!!
私はもうちょっと貯金を頑張ります

アンビエントノイズはノイズたりえるか (遮音性と周囲の聴きたい音について)

アンビエントノイズはノイズたりえるか


初っぱなから意味がわからないタイトルですが,今回の記事は


遮音性高めたら周りの音(アンビエントノイズ)が聞こえなくなるけど,ノイズではない周りの音を聞きたくなったら困るよね?どうすんの?


という感じでございます。



さて,このブログの本題になりつつあるカスタムイヤーモニターですが,その主眼は快適性と遮音性にあります。


快適性を最高にまで高めるために,個々人の耳型をとり,それを元にして(ほぼ)完全にフィットした造形のイヤホンにします。

また,よりよいフィットは耳穴をぴったりと隙間なく埋めることができるために,遮音性にも貢献します。


高い遮音性の魅力は,どのような環境にあっても音楽に没入できることでしょう。
たとえば,ウェッジが鳴り響くステージ上で正解に演奏者の音をモニタリングするために。
たとえば,うるさい地下鉄の車内で快適に音楽を,詳細漏らさずに聴くことができるということ。

いつでもどこでも自分用の快適な音楽空間を得られるというメリットは一度体験すると手放しがたいものがあります。


カスタムイヤーモニターの遮音性はメーカーによって表記が異なりますが大体20〜30デシベル程度の遮音性があります。

体感的には,大体ER-4Sの三段キノコを使ったときの遮音性と同等かやや劣る程度の遮音性ですね。
この状態で何も音楽を鳴らさない場合は,(小さいながらも)周囲の音を聞き取ることは可能です。

しかし,音楽を鳴らし始めると,周りの音を聞き取ることはほぼ不可能になってしまいます。


自宅だったらいいですが,街中で周囲の音が聞こえない状態というのは非常に危険です。
車のクラクション・注意を呼びかける人の声・警報音など様々な[聞くべき]音を聞き逃してしまい,その結果危険に身を置く結果になりません。

須山さんの言葉を借りるなら,[自分が被害者になるだけではなく,他の人を加害者にしてしまう可能性がある]ということです。


また,ステージ上でもアーティストとしても,周りの音が聞こえないために観衆の声援や拍手などを感じれず,疎外感を感じるということが多々あります。
私がライブに行くときは,基本的にER-20+カスタムチップといった音質に影響を与えない耳栓を使用しているのですが,それでも周囲から疎外感を感じることがあります。

自ら観衆にそれを求めてるアーティストとしては,応じる声が聞こえないということは非常に大きなストレスになるのではないかと思います。



それらの[聞こえない]問題に対処するため,2つの方法がとられています。

一つは,遮音性を下げること。
もう一つが,周囲の音をマイクで拾い,適切な音量でイヤーモニターへと返す方法です。



遮音性を下げるというアプローチは,遮音性が高くて周りの音が聞こえないなら,遮音性を下げればいいと,非常にわかりやすいです。


ただ,せっかく周りも音が聞こえないように遮音性を高めたものを,周りの音を聞きたいが為に遮音性を下げるという,アイデンティティレベルでの矛盾が発生します。

UEのカスタムプロダクツでは[アンビエントオプション]なるものがあります。
シェルに穴を開けることにより遮音性を半分程度に低めることができます。
穴をふさげば本来の遮音性を取り戻すことができます。

須山補聴器のFitearのプロミュージシャン向けの製品のオプションでは,周りの音を取り込む為に開けた穴に音響抵抗を設置し不必要な音をできる限り拾わないように調整しています。
つまり,必要な音域のみ遮音性を下げる,というアプローチです。
とはいえ音響抵抗は低音域の微調整は困難でなかなか難しいとお聞きしています。



周囲の音をマイクで拾い,適切な音量でイヤーモニターへと返す方法に関しては,ShereのE500に同梱されていたPTH(Push-To-Hear)がすでに市場に出ています。

http://www.amazon.co.jp/dp/B00101AKLW
まだ売ってますね…

なかなか面白く便利なツールだとは思うのですが,下手なプレイヤーよりも大きいということが難点で,早々にPTHを含まないSE530が発売されることとなり,いわば黒歴史に近いものに成り下がっています。


ステージ上では,アンビエントマイクという周囲の音を拾う専門のマイクを設置し,それをPAが調整してミュージシャンのイヤーモニターに返すという方法をとります。
このアプローチの弱点は,アンビエントマイクの位置とPA(と機器)のスキルによっては逆効果になることがあるということです。

ミュージシャンがA地点にいるのにB地点のアンビエントマイクの音を届けてしまったら… 疎外感を感じるどころではなく,意味不明なアクションをとりかねません。

日本のライブやコンサートではアンビエントマイクをあまり用いていないようです。
欧米では積極的に用いるようになってきたので,日本でもそのうち利用されるようになるでしょう。


周囲の音をマイクで拾い,適切な音量でイヤーモニターへと返す手法で特筆すべきなのが,Sensaphonicsの3D Active Ambientシステムです。
http://www.sensaphonics.com/prod_3d_ambient.html

    このブログではやたらSensaphonicsを押しますが,
    中の人ではないです(笑)
    ただ単にセンサが好きなだけです。


これは,イヤーモニターのシェル自体にマイクを設置し,それを専用の機器を使って3次元的に解析しモニターに送るという画期的な製品です。
耳の位置に左右それぞれマイクがあるので限りなく正確に周囲の音を再現することができます。
マイクのサイズの制限から低音域の再現性は厳しいですが,ステージ上では周囲のそれがあり,また低音は遮蔽しにくいため問題になることはないでしょう。
ただ非常に,いえ異常に高価だということを除けば魅力的な製品です。



では上記の手法いずれもとれない場合はどのようにすればいいのでしょうか。


外部の音を聞くのに一番簡単な方法は,身も蓋もないですが装着しないことです。
でもこれじゃ前提自体を否定しているので意味のない回答ですね。


じゃあどうすればいいのかというと。。。

私が行ってる方法は段階的に3つあります。
まぁ誰でも考えつくようなことですが。。。


まず音楽を止める
音楽を止めるだけでかなりの音を拾えるようになります。電車のアナウンス程度であれば問題ありません。


次に,半分だけ外す

完全に外してしまうのではなく,ヘリクスロックを残してカナル部を少し浮かせるようにします。


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イニシャルがある場所がヘリクスロックで,カナル部はご存じ耳穴に入る部分ですね。


こうすることにより,外の音を入れつつ元の装着にも素早く戻せます。

須山補聴器のカスタムは珠間切痕(一番下になる部分)に引っかかりがあり,容易に外せるようにしています。


通常カスタムイヤーモニターを外す場合は回すように外しますが,そうするとヘリクスまで外れてしまうのでまっすぐ上に浮かせるように外の音が聞こえるまで外します。
ヘリクスロックが外れない限り,耳から落ちることはほとんどありません。
そのまま押し込めば素早く完全な遮音を取り戻すことができます。


最後に,完全に外す。
片耳だけ外すという方法もありますが,方向の確認がとりにくくなり結局両方とも外すことが多いです。



その他,どなたかお勧めの方法がありましたらお教えいただけますでしょうか。



この遮音性とアンビエントの話,根本的な問題だけに奥が深く,なかなか面白いテーマです。

こういう感じのシリーズものも日記に取り入れていきたいですね。





ふーーー長文つかれたーーーーーーー!!!!

Sensaphonics 3MAX triple-driver

皆がUE-18 Proで沸き立つ中,違うところで興奮していたi_tです。


本日Sensaphonicsから3ドライバのイヤーモニターが発表されていました。
http://sensaphonics.com/news_44.html

デュアルロー・シングルハイの構成ですね。
ケーブルも交換可能になっています。

見た限り,CIをデュアルでスタックしてあるようにみえるんですが。。
ハイ側はなんでしょう?


とりあえず興奮したまま速報のみ

RSA The Shadow

ZIPPOサイズのRSA最新作PHPA
頑張る自分へのご褒美(笑)とかいいつつ購入してしまいました。


もうそろそろブログも更新しなきゃなぁと思い続けて数ヶ月(!!!)
ようやっと再開で御座います。




閑話休題



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The Shadowですが,印象として一番大きいのが,


小さい!!


ということ




びっくりするほど小さかったです。ほんとにZIPPOサイズですね。


あと軽い!
picoでも十分に軽いと思っていたんですが,The Shadowと比較するとずっしり重く大きいです。
基本的にスーツの内ポケットに入れて持ち運ぶのですが、picoではちょっと違和感があったのがほとんどなくなりました。


造形も美しく,所有欲を満足させるという噂通りです。




さて,肝心の音についてです。

全体的なイメージとしては,付帯音を削ぎ落としたソリッドで線の細い音です。
そのおかげで解像度は非常に高く聞こえます。
悪く言うと,MP3のビットレートを低くしたイメージに近いです。


温かみはなく,硬質で繊細な音を奏でます。



ハイはpicoと比較してずいぶん出ています。
細い音ですが,音圧は高く煌びやかになります。
高音部は特にセパレーションがよく,音場も広いのでハッとさせられるようなスネアを聞くことが出来ます。



ミッドは一番ゲインが高いようで,FitEar 333と組み合わせるとピークが出てきつくなります。
歯擦音もずいぶんあるので,ボリュームを高くすると聞くに堪えない時すらあります。

しかし,ミッドレンジの分離はすばらしく,混声や重奏では個々人の一音一音を聞き分けれるかと思うほどです。
ドライで解像度と分離に優れ,すばらしいミッドです。
それだけにピークが残念。。。
音場は狭いですが、左右のセパレーションが優秀なのでこれはこれで魅力的です。



一番評価に困るのが低音域です。


その他と同じく,ソリッドで解像度が高くいいサウンドなんですが,超低音がすっぱり出ていません。
コンプがかかっていない生楽器では超低音域の欠如によって落ち着かない腰高なイメージになってしまいます。


煌びやかなスネアに,ドライで正確なボーカル・エッジの鋭いギターサウンド,唸るようなベースまではいいんですが,バスドラが響かない!!


上記のイメージはヘヴィメタルなんですが,コンプをゴリゴリに効かせたヘヴィメタルですらこの状態なので,ギターソロなんぞ聴こうものなら足元がスコンと抜けたような印象になってしまいます。

高音が煌びやかな分,超低音の欠如が決定的になる曲が多く,ジャズやオーケストラをThe Shadowで聴こうとは思えません。
音源によっては相当な酷評が予想されます。


ここまですごくいい感じできたのに何でここだけ!?と,残念でなりません。
コントラバスの音が痛いなんて感じるとは思いませんでした。


コンプを効かせたヘヴィメタルやヒップホップ,ポップスなどはいい感じになりますね。
線が細いですが,その分見通しがよく,刺激的でありながらすっきりとしたいいサウンドです。
ベースにもギターにも埋もれず、バックコーラスがしっかり分離して聞き取れるのは感心しました。



picoとの比較


picoと比較すると音の豊かさがまったく足りません。
設計思想の違いもありそうですが,両者の音質には隔絶とした差があると思います。
picoの方が数段上手ですね。


音場はpicoの方がずっと広いですが、チャンネルセパレーションはThe Shadowが優秀です。
スネア・シンバルは柔らかく丸いpicoに対し,鋭く強いThe Shadow
色気ののった艶のあるボーカルのpicoと,ドライでテンションが高いThe Shadow
控えめでありながらしっかりと全体の土台を築くベースを鳴らすpicoと,ほかと離れながらも一音一音をくっきりと描くThe Shadow


picoとThe Shadowは正反対と言っていいほどイメージが異なる音を奏でるので,聴き比べるという意味では我ながらなかなかよいチョイスをしたのではないかと。




イヤホンとの相性


超低音の欠如以外はFitEar 333に似たイメージの音造りです。
そのため、FitEar 333と組み合わせた場合ハイ・ミッドともにピークがきつく長時間聴いてはいられません。
また,超低音域の欠如も露骨にわかります。
FitEar 333との相性は最悪に近いですね。非常に悪いです。


柔らかい印象のUE10との組み合わせは非常によく,アンプとイヤーモニターとの相性を改めて考えさせられます。
UE10は高音が伸びきらないという印象があるんですが,それが払拭されますし,うなるようなベースは見事です。
UE10では定置が不安定になりがちですが,The Shadowはしっかりと補ってくれます。
そういえばRayさんはUEのカスタムを使っていたような。。


FitEar 333とpico・UE10とThe Shadowというふうに完全に使い分けています。





まとめ

The Shadow

買いですよ!!
ジャンルによりますが,すっきりしたサウンドがお好みであれば,強くお勧めできます。